修士論文 パーリ仏典における安般念定―『四ニカーヤ』を中心としてー
論文要旨
1.序論
私が安般念の十六事を最初に知ったのは、『清浄道論』においてである。元来、瞑想に興味があり、細々実践する中で、『清浄道論』における安般念の十六事の重要性を認識し、研究対象とすることにした。
安般念の十六事は、「出入息念」のエッセンスであるが、複雑多岐な内容である。これを解明するために、四ニカーヤまで遡って経典の中にヒントを見つけようとした。
目的は、四ニカーヤに説かれる「出入息念」の歴史的な展開や変遷の状況を明らかにすることである。
2.四ニカーヤにみられる出入息念
①「四事及び十六事が具体的に記述された経典群」と②「その他で出入息の言葉が現れる経典群」を四ニカーヤの中から収集した。
①を四事から十六事への変遷を検証する資料とした。
②を四事以前に遡及する資料とした。
南伝大蔵経・原始仏典・パーリ経典の3つのシリーズに眼を通し、漏れの無いように万全を図った。それが3頁~23頁にわたって展開される。それを基礎資料として提示する。
3.資料の検討
最初に「四事や十六事が具体的に記述された経典群」を検討した。抽出した基礎資料を4グループに分類した。分類の指標は、出入息念の説明の仕方である。これをAグループからDグループの4つに区分けし、それぞれにグループ名を割り当てた。次に「その他で出入息の言葉が現れる経典群」を3つに分類し、1つを除いてEグループとFグループに割り当てた。一覧性を得るために、3.1.2.(表)グループ分類を添付した。
検討の結果として、「四事や十六事が具体的に記述された経典群」のグループを比較対照する中で、出入息念の変遷の状況が明らかになってきた。比較した項目は、①出入息念と四念処との関係②出入息念と四禅との関係の2つである。
「その他で出入息の言葉が現れる経典群」の検討をし、四事以前に遡れると推測できる経文を提示した。
4.結論
「結論の前書き」においては、屢々検証する過程で、気になっていた二つの件を解決しようとした。念の定義と収集資料の網羅についてである。
「結論」においては、
①四ニカーヤにおける「出入息念」の歴史的展開と変遷の状況を明らかにした。
②四事以前を考察し、『リグ・ヴェーダ』まで遡れる可能性を提示した。 以上